「ゲーム依存」~やめさせるための2つの側面とは?~
前回のPART2では、ゲーム依存の「物理的な対策方法」に関して考えました。
※PART2をご覧でない方は下記の記事を先にご確認ください。
今回の最終回PART3では、「環境面での対策と考え方」、「eスポーツを利用してゲーム依存を解消した事例」をお伝えしますね。
ゲーム依存の2つの対策分野:
2.「環境面での対策と与える影響を考える」
「環境」とはなんでしょうか?
この場合は、「家庭での環境」です。これが子どもの心に与える影響を熟考する、という事です。
この観点は、目に見えにくいため、軽視されがちですが、「物理的な対策方法」を効果的にするために「極めて」重要な側面です。実際、この側面が整えば、子どもとの関係を悪くせずに指導でき、また子どもは納得して、「自走(自己管理」していく事ができるようになっていきます。
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①「切り替えやすい」環境を作る:
体験してみれば分かりますが、オンラインゲームに集中していると、ある面、「別世界」にいるような感覚になります。
これは、例えると、映画館で長時間、暗い中で迫力ある映像と音声に吸い込まれていくのと同じといえます。
大人の私たちでさえ、映画が終わったばかりの時は、その世界に引き込まれており、映画館を出ても、しばらくは、映画の世界にいるような感覚になるのではないでしょうか?
このような時に、どうすれば現実の世界に早めに「引き戻される」でしょうか?
それは、現実世界の人と会話したり、食事や息抜きをする、もしくは運動したりすることも役立ちます。
また、もし、映画を観ていない人から「現実の世界へおかえりなさい!」と言われたとしたら(実際には言われませんが…)、どう感じますか?我に返りやすくなりますよね。
同様のことがこの「ゲーム界」から子どもを引き戻すときにも言えます。
子どもも「引き込まれている」ゲームを時間で終了させるのはとても難しく感じます。いきなり、モードを切り替えることは難しいでしょう。
それで、ゲームの終わりを告げるような声かけや環境を作り、気持ちの切り替えを助けるようにします。
例えば、「(ゲーム名)の世界から帰ってきたね。おかえり!」というような声掛けを笑いを交えながら、実施しているお母さんもいます。
最初は、効果なしでしたが、表現を変えて繰り返すうちに、子どもが切り替えに慣れてきたとのことです。水を飲ませる、シャワーを浴びさせる、軽い運動、手伝いをさせる、なども含めて行っているようです。
勿論、あくまでも、「ゲーム界」が本拠地で、「家庭/学校生活」が「仮の世界」と感じないように、表現や接し方に注意していく必要があります。
②ゲーム以外の事への関心を刺激する:
私たちをサポートして下さっている医師の話によると、「ギャンブル、ネット依存は、薬物依存やアルコール依存とは違い、別の関心のあるものを複数見つけさせて、没頭させることで緩和できる場合が多い」とのことでした。
実際、これまで、私たちに相談頂いた生徒の中にも、この形でネット依存を大幅に軽減する事ができた子どもも複数いました。
しかし、本人は、「ゲームやネット以外に好きなものはない!」と言い切るかもしれませんが、そこで引き下がってはいけません。本人は、関心がある、適性があるものに気付いていない、もしくは「学んでいない」だけの場合が多いです。
実際、誰でも同じかと思いますが、知識や体験が少ない状態で、関心のあるものや適性を判断することは難しいのではないでしょうか?
年齢を重ねるごとに、知識や体験を増やしていき、関心のあるものが増えていきます。場合によっては、好みそのものが変わることもあるわけです。
そうしていくうちに、自分の特性や適性がある程度、把握できるようになりますよね。
このように考えますと、まずは親が我が子の小さいころからの特性や適性(遺伝も考慮)をよく考え、それに応じたゲーム以外の関心事を提案していく事が相応しいことが分かります。
それに関心を示さないようであれば、新たな、全く異なる分野を複数提案します。
ある中学生男子は、お父さんが学生時代に少しプレイしていたギターと作曲を自然な形で紹介したところ、少し関心を示し、次第にそちらに移っていき、ゲームは時間を決めて管理する事ができるようになりました。
また、別の子は、同じデジタル機器の中でも、まずは、ゲームから、動画を作成することに関心を移せました。直接的な解決ではないですが、最初の段階としては、上出来です。
「オンライン対戦ゲーム」という、内容も仲間も健全ではなかった依存対象から、クリエイティブに自然や動物を撮影した動画を綺麗に編集して、YouTubeにアップする、という健全な方向性に移行できたことは、「間接的」に関心のあることを見つけさせるためには有効でした。
③家族内での「責任」を意識させる:
よく指摘されることですが、「家庭での結びつきが強い」子どもは、ネットやスマホを依存する事なく、適切に使いこなしている確率が高いと言われます。
家族、親子での結びつきが強いと、家庭内での「忙しさ」が違ってきます。
それには、基本的なことですが、手伝いやその他の家族内での責任をしっかりと割り振ることや、団欒を共にする方向性が不可欠です。
夕食の手伝い、買い物、掃除、兄弟の世話、家族での外出や何気ない会話などがあります。この中でも、「親に世話されている」子どもと、「共同生活するための一員であること」を意識している子どもとでは、成長に大きな差が出てきます。
スマホに関しても、前者の子どもは、「みんな持っているんだから、親が買ってくれて当たり前。買ってもらったら、自分がどう使おうと勝手」という見方をする子もいます。
逆に後者では、「共同生活している親から貸してもらっている」という見方が養われるようになります。貸与者の指示に従おうとするだけでなく、家族の一員として、自分にできることに目を向けれれるようになっていきます。
結果的に、ゲーム依存にならずに、ゲームやSNSを楽しめるようになるのです。
今まで、このような「責任」を意識させてこなかった家庭で急に締め付け始めると、反発が大きくなりますので、そのような家庭では、あきらめることなく、少しずつ、開始していく事をお勧めします。(詳しい方法もサポートできますので、必要に応じてご相談メニューをご利用ください)
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④運動や社会活動の面白さを教える:
10代の時期は体力、運動神経など身体能力を高める事、また、そこでの鍛錬に耐えることを学ぶ非常に大切な時期です。
この時期に、ゲーム依存になってしまう事は、計り知れないダメージを与えてしまいます。
それで、きつい運動ではなく、かっこいいダンスやスケートボード、サイクリングなど、気軽に取り組める運動を何らかの方法で体験させる事ができます。特にオリンピックなど、テレビでは何らかの競技が定期的に話題に上ります。
私の知人で、中高生の子供3人がいる、ある家庭では、話題に上がるスポーツ(可能な範囲でですが)をその都度、家族で体験、学ぶようにしています。
先日も、ボルダリングに家族で挑戦してきた、と言っていました。子どもたちも親も決して運動が得意ではありませんが、うまくできなくても、「体験する」ことを重視されており、それを家族で行うことで時間の上手な使い方、家族の結びつき、一員としての責任を自然に教えられている、とのことでした。素晴らしい方法ですね。
また、何らかのボランティアなどの社会活動にも目を向けさせると、意外と、それにハマる子供たちもいます。
地域のシニア世代対象、掃除活動など探せば様々なボランティア活動があります。
そこでは、感謝される事や、社会に役立っている、という体験ができます。
最初は嫌々ながら体験したある子どもは、「ゲームの世界以外で、リアルな人に初めて認められた」と嬉しそうに語っていました。
この子は、その後も定期的にボランティア活動を続け、今ではゲームを適切な位置で楽しんでいます。
このように、「環境面での対策と考え方」に関する4つの分野を考えてきました。
確かに、このような家族の一員、社会の一員としての基本的なことを教え、体験させることは、ゲーム依存からの脱却だけでなく、子どもの人間的成長をも向上させますね。
物理的側面と合わせて、まずは親が自分の家庭ではどのように適用できるかを思案して頂ければ嬉しいです。
「eスポーツを利用してゲーム依存を解消した事例」
しかし、上記の提案では対応できないほどの、深刻なゲーム依存の子どもも存在しています。そのような子どもは対応策がないのでしょうか?
そうではありません。実際、重度のゲーム依存の子どもたちを更生させてきた方法があります。
それが、「eスポーツ」を利用する更生方法です。
PART1でも述べましたが、e-スポーツは、オンラインゲームに一層、依存してしまうのでは?と心配している保護者や先生も多いのが現状です。それも当然の反応かと思います。
しかし、それを、目的意識をもって管理して取り入れる事で、良い成果を挙げている学校があります。私たちとも協働しているある学校では、部活動的な位置づけで、eスポーツを取り入れています。
対象は、重度のゲーム依存の引きこもり傾向のある生徒たちでした。
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この学校では、引きこもりや不登校の生徒も受け入れていますが、近年、このような引きこもり、不登校の要因のほぼすべてが、ネット/スマホ依存やトラブル、との事で、その対応に注力されています。
熱心な校長先生も自ら、引きこもり生徒宅に何度も訪問し、多くの生徒をネット/スマホ依存から脱却させてきました。
現在、私たちと共に、地元テレビ局の取材を受けていますが、今回、この引きこもり生徒を、まずは自宅から共に連れ出して、「学校でみんなと」ゲームさせる状況を実現させました。
最初は、固く拒否していた生徒も、何とか説得に応じて参加し始め、現在では、最高20名くらいでの「eスポーツ大会」が開催されています。
生徒たちは、どのように変化していくのでしょうか?
彼らは自宅で、顔の見えない相手とオンラインで対戦していると、異様な疲れと共に、「見えない相手を殺してやりたい」と感じることもあったそうです。
しかし、学校では、対戦相手が目の前におり、その環境で交互に対戦しあうことで、感情に変化が生じてきたようです。「見える相手を前にした良い意味での興奮や達成感を味わえた」そうです。
校長先生によると、多くの生徒たちは、引きこもっていた間は、相手や周りの人の表情を読んだり、想像することもできずに、まさに「コミュ障」と言われる状況だったようですが、学校で、見える相手と対戦する事で、人の感情を少しずつ感じられるようになってきたとのことです。
その他にも、当然ながら、全員で時間を守って、集中してゲームをする事、絶対に喧嘩はさせないこと、そして、テスト期間中は、スマホは没収する事、その代わりに、テスト期間終了後は、頻繁に「eスポーツ大会」を計画するようにして、メリハリをつけて、適切にゲームを楽しむ事を教え込んでいます。
このような取り組みで、複数の生徒が少しずつ、適切な自己管理ができるようになり、極度のゲーム依存から脱却し、なんと、技術系の専門学校や工学部への進学を決めた子どももいるそうです。
本当に、素晴らしい実績と対応ですね。
家庭で真似することは難しいかもしれませんが、やはり、強制的に遮断するのではなく、代替えを見つけることのほかに、このようなブームを逆手に取った対応方法で成果を挙げる事も可能である、という事が証明されています。
今後、このようなeスポーツをゲーム依存対策として、取り入れていくスクールも増えていくかと思います。
「最後の避難所」として、このような施設も考慮に入れながら、私たち保護者各自としては、可能な対応を実施していきたいですね。
「eスポーツ」と「ゲーム依存」の考え方として、三部作で共に考慮してきましたが、いかがだったでしょうか?
今まで、あまり考えてこなかった事も含めて、何らかの「気づき」になれば幸いです。
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