子どもを守る「深く考える」力とは?

「蒔いたものを刈り取る」事にならないために:

最近の様々なニュースの出来事を見ていて、ある学校の校長先生は、このように述べました。

「子どもだけでなく、大人も深く考える事が少なくなってしまった‥

皆さんも同じようにお感じでしょうか?

確かに、政治家の失言、パワハラ問題の謝罪会見や取材への受け答え、短絡的な犯罪など、著名人や要職にある方でさえ、「もう少し考えて発言できなかったのか?」と感じる場面が増えていると感じますね。

ネットへのコメントにもそのような感想が溢れています。以前から、そのような方はいましたが、それでも、近年、そのような「良く考えずに」発言、行動する人は、私たちの日常生活でも確実に増えています。

スポンサーリンク




しかし、そのように、良く考えない言動の影響は、ブーメランのようにその人に戻ってきます。昔の賢人は、「人は蒔いたものをものを刈り取る」と述べました。良くも悪くも、自分が「蒔く」言動に注意が必要だという事です。

ですから、どんな言い訳をしたとしても、「良く考えない」言動は、ほとんどの場合、その人にとってデメリットになります。

深く考えられない理由とは?:

では、なぜ、「深く考える」事ができないのでしょうか?

様々な要因が関係していますが、多くの場合、1つの観点が欠けているようです。

それは、「物事や自分を常に客観的に見る」認識です。客観的とは何でしょうか?それは、「特定の立場に捉われずに、物事を見たり、考えたりするさま」と言われる事が多いです。

つまり、「第三者目線」と「先を読む目線」で、周りの出来事、相手、そして何よりも「自分を見れるかどうか?」という観点です。

あまり深く考えない方は、この客観的見方ができないため、「ここでこのような発言をすると、どんな印象を与えるか?」「先にこれを処理しておかないと、急な事が起きた時に対応できなくなるかも」というような事を考える事ができず、行き当たりばったりの対応になってしまう事が多いのです。

さらに、このような方が、「蒔いたものを刈り取る」ような状況になると、急に翻ったように、言い訳をしたり、相手に逆ギレしたりするようになるわけです。

一度、このような「人間性」が周りの方に伝わると、その評判を挽回するのは簡単ではありません。

スポンサーリンク




子どもに「深く考える習慣」を教える:

このことは、私たち保護者にとっても大切な点ではないでしょうか?

親が「深く考えない」と、子どもも「深く考えない」事が当たり前になります。そうなると、大人だと、何とか対応できたことでも、子どもだと対応できずに、取り返しのつかない結果になってしまう事件もありますね。

実際、私たちがサポートする学校や保護者の現状を見ていると、子どものスマホやSNSでのトラブル、ネット依存はほとんどの場合が、この「深く考えない」「先を予測しない」事が原因となっています。勿論、子どもなので、思考にも限界があります。

しかし、全ての子どもがこのようなネット系のトラブルに遭遇している訳ではなく、むしろ、全体的な比率からすれば、大きなトラブルに巻き込まれる子どもの方が少ない訳です。

どこに違いがあるのでしょうか?

それが、「子どもなりに、状況や先を予想できる思考力が身についているか?」という点です。

以前、私たちは、トラブルに巻き込まれそうになっても、それを回避できた中学生の子どもたちと話し合った事がありました。

その子たちは、普段から次のように考えて対応しているとの事でした。

「この子には、このスタンプは使わない方がいい」「この言葉だと、こういうように誤解させるかもしれない」

「(知らない人とのSNSのやりとりで)この人、同じ年って言ってるけど、なんか変だ‥ 止めておこう」

「ゲームは沢山やりたいけど、深夜までやって、学校の勉強ができなくなってしまうなら、学校に行っている意味がない。タイマーをかけて使用しよう」

いかがでしょうか?とても立派な「深い考え方」ですね。

この子たちに、大人のような判断力はない訳ですが、それでも結果的に、ネットやSNSを使用しながらも、トラブルや依存が無い状態で使いこなしています。

つまり、この子たちレベルの観点で、「思考力/予想力」がしっかりと働いているので、トラブルや依存を避ける結果に結びついています。

では、この子たちは、自分の短い人生経験や生来の頭の良さで、このような「思考力/予想力」が身についたのでしょうか?

スポンサーリンク




そうではありません。

その子たちとその保護者にもお話を伺う機会がありました。

その際、保護者が共通して語っておられたのは、「子どもが小さな頃から、考えさせる癖を付けさせていた」という事でした。

具体的には、「こうしなさい、ああしなさい」と命令するより、「どうするの?それをしたらどうなると思う?相手にこう言われると、自分ならどう思う?そうだとすると、今、あなたが相手にそのように言うのはどうかな?」というような「自分で考えさせる観点」を養うようにさせていたようです。

私が賢いなぁと思ったのは、「思い悩ませる」のではなく、自分と相手のために「考えさせる」というスタンスで教えている、という点でした。

そのような子どもたちは、多くの場合、神経質になりすぎるのではなく、明るく屈託ない様子や、ある程度、子どもなりの自信を持った印象でありながらも、良く考える思考を持っている事が多いです。

良く考える、自分を客観的に見る見方や考え方を培っていると、当然ながらそれは成績などの学業やその後の人間関係、コミュニケーション力にも影響してきます。

私たちは企業に対しても、ヒューマンリテラシー講座を実施していますが、その中でも、「シンキング力」と「コミュニケーション力」は密接に結びついている、という事が教えられます。

それで、このように考えてくると、親である私たちは勿論、子どもにとっても「深く考える」思考方法を教えていく事は、我が子の将来を考えるうえでとても重要な要素である事が分かるのではないでしょうか?

私もそうですが、まずは保護者自身が普段から「迅速に深く考えた言動」を身に付け、示すようにしたいですね。

そうすることにより、「良いものを蒔いて、良いものを刈り取る」ように子どもを助けることができるのです。

具体的な「深く考える」方法に関しては、今後の記事でまたご紹介していきます。

スポンサーリンク




 

 

 

保護者に必要な「ヒューマンリテラシー」とは?

「ヒューマンリテラシー」とは何か?

最近、学校の情報の授業にも含まれている「情報モラル」「情報リテラシー」という言葉と共に、よく聞くようになったのが、この「ヒューマンリテラシー」という言葉です。

私たち団体の活動コンセプトも、「ヒューマンリテラシーをベースとした情報モラル教育を普及させる」となっています。

では、この「ヒューマンリテラシー」とはどんな意味なのでしょうか?

また、なぜ、保護者や教員にとって、意識して身に付けるべきスキルなのでしょうか?

今回は、この点に関して基礎的な事を共に考えていきましょう。

スポンサーリンク




ヒューマンリテラシーの定義や考え方については様々な見方があります。また、そのような考え方は、時代に合わせて変化していく事もあります。

現状で、ヒューマンリテラシーとは、「人間同士が信頼でき、生きやすい世界を作るために不可欠な人間特性的能力、活用できる人格特性」と定義される事が多いです。

漠然とした解釈かもしれませんが、私たち団体では、「お互いに信頼し、協力して、様々なジョブを成し遂げていくために必要な人格特性力及び思考力」と考えています。

一言で言うと、「総合的人間力」と表現できるかもしれません。

当然ですが、私たちは、いつの時代でも、どんな状況になっても、人間社会がある限りは、一人だけで生きていく事はできません。

間接的であったとしても、人との繋がりや交渉をしながら生きていきます。

ですから、特異な専門性や知識、経験以上に、まず、最低条件として必要なのが、このヒューマンリテラシーです。

ヒューマンリテラシーのメリットは?

例えば、皆さんの職場や友人関係で下記の人がいた場合、どちらを信頼し、近づきたいと思われるでしょうか?

①とても仕事ができたり、何か優れた能力や外見を持っているが、人間性にあまり魅力がない人。

②能力や専門性は普通だが、人間性が良い人。

私たちが実施している「ヒューマンリテラシー教育講座」では、多くの方が、②を選択します。

比較的、人は①を目指そうとしますが、長い目で見て、周りから信頼が得られるのは、「ヒューマンリテラシー」を向上させている②の方、という事になります。

確かに、「総合的な人間力」がある方は、年齢性別問わずに、周りからも自然に支えられます。

人生に様々な試練があっても、適切な考え方の基に対応していけるので、結果的に、人間力が不足している方より、幸福な人生を送っていけます。

そして、「能力や専門性」と「人間力」はトレーニング次第で両立する事は可能なのです。

スポンサーリンク




さらに、どんな交渉事であっても、この総合的な人間力が相手に伝わると、「NO!がYES!」に変わる事がよくあるのです。

このように考えてきますと、人間は誰であっても、意識してヒューマンリテラシーを向上させるなら、お互いにとって、どちらにもメリットがある交渉結果へと、交渉を詰めていく事ができるようになります。

この総合的な「ヒューマンリテラシー」が役立つのは、ビジネス間だけではありません。知人、友人、親族、家族、夫婦、義理の親、兄弟、そして子供に対しても役立ちます。

「子どもに対しても必要なの?」とお感じになる方もあるようですが、親子関係こそ、特に親の「人間力」が大きく影響を及ぼします。

「様々なジョブを成し遂げていくために必要な人格特性力及び思考力」は、子ども側からすると、親が一番、身に付けていなければならないスキルと言えます。

先日、カウンセリングを実施した中学生の生徒は、「母親が、自分の気持ちを理解しようとしてくれない、話を聞いてくれても、結論を言い放って終わってしまう‥」と不満を語っていました。

親の立場からしてみれば、言いたい事は沢山ありますが、やはり、子どもを正しく教育するという「ジョブ」を成し遂げようとするなら、理論、結論だけでなく、それにとって近道となる、「人格的特性と深い思考力」を表した対応をとるなら、子どもの反応も少しずつ変化してきます。

なぜなら、親のそのような「受け入れ態勢」に子どもは安心感と信頼を示すようになってくるからです。

上記の様々な事情から、特に保護者が意識して「ヒューマンリテラシー」を身に付ける事は、とても役立つ重要な事だと理解できるのではないでしょうか?

スポンサーリンク




ヒューマンリテラシーの2つの要素:

では、このヒューマンリテラシーには具体的にどのような要素が含まれますか?

私たちが活動する中で、特に重要なのは、次の2つの要素だと考えています。

①「コミュニケーション力」

自分と相手との間で「情報、意思、感情」を、「相手に理解しやすいように」伝えあい、理解し合う事。

②「シンキング力」

論理的、批評的思考をベースに、相手の表情や言動から、相手の意向や希望を敏感に想像し、分かりやすく説明、意思伝達できる考え方。

様々な考え方がありますが、私たちが啓蒙活動を展開する中で、良い関係でいられる親子や、先生と生徒間にはこの2つの要素が少なからずあります。

そして、そのような関係で育つ子どもは、ネット依存やトラブルに悩むことなく、充実した学生生活や家庭生活を送っているようです。

そのようなお母さんたちに話をお聞きすると、多くの方が、「感情的になるような時にも、コミュニケーションや子どもの考え方を理解する事、正しい考え方を子どもが理解しやすい形で伝える事を意識している」と答えられます。素晴らしい事ですね!

それで、私たち大人は、確かに何も考えず、意識せずに、子どもを叱ったり、注意したりするのではなく、「自分は我が子に、人間力がある親だと見られているだろうか?」と客観的に自問する事が、まずは大切です。

確かに、私たち親は、多忙で、感情的にも煩わされる事が多いですね。

でも、そうであっても、子どもに響く形で教えていくために、少し、この見方を持つのはいかがでしょうか?

では、次回以降、具体的なこの2つの特質である、親が身に付ける「コミュニケーション力」と「シンキング力」に関して、また考えていきましょう。

スポンサーリンク




 

「ネット/スマホ依存」~「コミュニケーション力」への深刻な影響とは?

なぜ、「コミュニケーション力の向上」は大切?

これだけICT化が進んでも、多くの企業が求める能力のトップは、相変わらず「コミュニケーション力」と言われています。

なぜ、長年に渡り、この能力は重要視されるのでしょうか?

それは、どれだけIT化やプログラミング教育が進んでも、私たちが人間である以上、大切な場面では必ず「交渉」が必要となるからです。

皆さんもこれまでの人生の重要なイベントでは、必ず、対象との何らかの「交渉」があったのではないでしょうか?

スポンサーリンク




多くの場合、重要な交渉事は、「対面か電話」で行われます。

技術的には、AIが代行する時代も近いかと思われます。しかし、交渉事に、一番大切な信頼感は機械では伝わりにくいですね。

やはり、人間的な「誠意や人間性」といった「人間力(ヒューマンリテラシー)」的要素が信頼感には欠かせません。

この「人間的要素」が伝わることで、交渉事の土台が築かれ、最善の結果を双方が得る事ができるのです。

このように考えますと、この先も、「コミュニケーション力」の重要性は高まり続けます。「学生時代から、コミュニケーション力を身に付けた」若者は幸福な人生を歩むことができ、その人の周りの人をも幸福にさせていきます。

あなたの周りにもそのような方がいるのではないでしょうか?

「ネット/スマホ依存」による影響とは?

しかし、それとは逆に、今、大きな問題として注目されているのが、子どもたちの「ネット/スマホ依存によるコミュニケーション力の大幅な低下」です。

特に、「コミュ障」と呼ばれる、コミュニケーションを特に苦手とする子どもたちが急増している事が心配されています。

私たちが支援している中学校、高等学校でも、生徒本人が下記のような悩みを伝えてきました。

スポンサーリンク




「SNSグループでは何でも伝え合うので、逆に学校では、友達と話す話題も無くなってしまう。直接会うと、ぎこちなくなってしまう友だちが多い。」

・「LINEでは短文を投げ合うので、相手にどう思われるかなど考えている余裕がない。結果的に知らないうちに相手を怒らせてしまうことがよくある。でも、直接話して解決する話し方が分からず困っている‥」

上記は一例に過ぎませんが、やはり、社会に適用していく「コミュニケーション力」が身についていない事は明らかですね。

この問題を、もう少し「深く考える」と?

ここで、私たち親はもう少し「深く」、この状況を考えてみたいと思います。

本来の学校の目的を考えると、子どもの頃からSNSに没頭してしまうことは人間性の成長に大きなマイナスになります。

なぜでしょうか?

それは、社会性を身につける学生の間は特に、「外へ外へ」と自分を広げていく必要があります。

この時期に、どれだけ「自分の考え方や感じ方を広げたか?」が、その後のコミュニケーション力に大きく影響します。対面コミュニケーション力を磨く絶好の機会が学生時代なのです。

しかし、SNSやネットに依存するとどうなるでしょうか?

スポンサーリンク




視力や体調への影響はよく取り上げられますが、「子どもの社会性」にも大きな影響を与えます。

基本的に、SNSは仲良しグループでやりとりしていきます。

「気があう」友だちだけのグループで、その交友は以前とは違い、帰宅しても事実上24時間続きます。つまり、「気があう」友だちとの交友は異様に深まります

逆に、「気が合わない」、またはグループに入れない子に対しては、無関心となり、いつしか仲間外れ、いじめの対象にもなっていくのが現状です。

これがエスカレートして、引きこもりや自殺にまで追い込まれる事件は皆さんもよくご存じかと思います。

このように、スマホやSNSは適切に使わずに依存させてしまうと、本来、「外へ外へ」と自分を広げる大切な時期に、「内へ内へ」とこもらせ、同時に「自分と合わない子は受け入れない、排除していく」という事が普通である、という感覚や考え方を育ててしまうのです。

こうなってしまった子どもが進学や就職で、社会に適用できなくなり、「自他ともに傷つけてしまう」結果になったケースもあります。

子どものコミュニケーション力向上のための最初の2つのステップ

では、保護者として、どうすれば子どものコミュニケーション力を育てていけますか?

このブログでは、今後の記事で、そのための方法を少しずつ取り上げていきますが、まず、一番重要なのは、下記の2点です。

スポンサーリンク




「SNSやスマホが子どもに与える影響を真剣に考える」

成績低下やトラブルに巻き込まれる、という上辺の影響だけでなく、上記の様な「心、考え方、感性」にも、どのよう に影響するのかを、親が深く考える必要があります。

「親がコミュニケーションの模範となる」

親自身が、子どもと、夫や親族など、身近な人とのコミュニケーションが上手にとれていれば、それは子どもにとって「普通の人間力」と映ります

そして、魅力を感じると、その親のコミュニケーションの仕方を自然と真似るようになっていきます。

それで、まずは、私たち親は、上記2点を、いつも意識する事からはじめましょう!

「分かってるけど、私がコミュニケーションが苦手で‥」というお母さんたちからの相談も受けます。

でも、親自身がこの面を苦手に感じていても心配いりません。

コミュニケーション力は「学びと実践」により、大幅に向上させられるからです。

今後の記事では、私たちが、企業での社員教育や学校でのヒューマンリテラシー教育で使用している方法を、少しずつお伝えしていきます。

主に、「コミュニケーション力」と「深考力」の習得方法を共に学べます。

我が子の将来に良い影響を与える「人間力(ヒューマンリテラシー)」を、親が身に付ける点で、共に意識していきましょう!

スポンサーリンク